キングオブコメディ

『キングオブコメディ高橋健一容疑者逮捕』という文字を見たときは目の前がくらくらして、のどの奥に嫌なものがこみ上げました。

と言ってもその時点では別人だろう、デマだろうという気持ちがまだ半分はありましたが、パトカーの後部座席にうつむいて座っている高橋さんの映像をみたところでリアルをつきつけられました。

 

2000年ごろだったと思います。

当時お笑いにはまり始めていた私でしたがネタ番組はオンバトくらいしかなく、毎週どんな芸人が出てくるかだけが生活の楽しみだった時期がありました。

割と漫才師が強くて、設定に入ってテンポとキャラで展開する漫才コント系の芸人が多かったと記憶しています。

そんな時、まとっている負の空気とコンビ名のミスマッチが妙に気になるコンビが初挑戦初オンエアを勝ち取りました。

『以上、人殺しのニュースでした』

という高橋さんの一言から始まるコント。現在より垢抜けておらず、正体不明感が強かった今野さん。

たしなめとも訂正とも言える高橋さんのボソッと一言で仕留めるツッコミが新鮮で、コント全体を覆う不穏な空気がたまらなかった。

セリフ量も圧倒的に少ないのに面白くて、これは間で笑わせられたんだな、とお笑いがよくわからないなりに感動しました。

 

そこからキンコメのコントが好きになったのですが、特に好きだったのは不登校児(高橋さん)を励ましにきた同級生(今野さん)のコント。

無自覚に高橋さんを傷つけていく今野さんに対する高橋さんの返しが「とどめ?」の一言。詩的な感じすらしました。

その後芸歴を重ねるにつれて今野さんのキャラクターを全面に出したポップなネタをやるようになったけど、根底に流れる空気は変わっていなかったし、なにより15年間磨いてきたコントでキングオブコントを獲ったときは嬉しかった。売れてくれ、と心から思いました。

コンビとしてテレビで売れたかは、正直言って微妙だったかもしれません。だけど最近は今野さんは俳優として、高橋さんはサブカルチャーの界隈で新たなキャリアも積み重ねていたところで、お互い別のフィールドで得たものをどうコントに還元していくのかを楽しみにしていました。お二人の年齢的にも、ネタにいい味が出てくる頃でした。

それがもうどうやっても終わりです。本当にやりきれません。

高橋さんはお笑いの職能は失ってしまいました。とりあえず今日、明日を生きることだけを考えてくれたら。

今野さんは直感ですが、ここからすごいことになる気がします。年齢を重ねればもっと存在感のある役者・コメディアンになりそう。

 

とか書きましたが結局、なにをしてんだよ、とい思いに行き着きます。なんでだよ!

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